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ICT教育

202601/28

杉並区立杉並第一小学校・ポケモンが登場するオリジナルの物語づくりの活用事例報告

「ポケモンプログラミングスタートキット」の制作監修等を行っていただいている宮島さんに本教材を使用した授業実践を取材いただきました。

 


文責:宮島衣瑛(広島大学 特命助教)

東京都杉並区立杉並第一小学校では、3年生からプログラミングの学習に取り組んでいます。今年度よりポケモンプログラミングスタートキットを活用しており、プログラミングに初挑戦している子どもたちの様子を参観しました。

 

ピカチュウが動いてる!

 

写真1:ピカチュウを歩かせるプログラムを作っている様子

 

 プログラミングをするのが初めての子どもたち。まずはピカチュウを走らせるプログラムをつくりました。「ここにこのブロックをいれて...」「あれ、これだと途中までしか動かないな...」プログラミングは一回でうまくいくわけではなく、「ああでもない、こうでもない」と試行錯誤・創意工夫を繰り返していく必要があります。自分が実現したい動きにするために、ブロックの組み合わせを色々と試している姿が印象的でした。自分が書いたプログラムによって、ピカチュウがコンピュータの画面のなかを動き回るのはとてもかわいらしく、教室の至るところで「わぁー!」と歓声が上がっています。

 ポケモンの動かし方を学んだら、次はいよいよオリジナルの物語づくりです。「自分が好きなポケモンを登場させて、どんな物語をつくりたいか考えてみよう」という先生の声掛けから、子どもたちはワークシートにアイデアを書き込み始めました。

 

写真2:ワークシートに書かれたアイデア

 

 ワークシートはあくまでも補助的なものです。実際に作っていくなかで、新しいアイデアをどんどん思いつき、最終的にははじめに考えていたものとはまったく違うストーリーになっていることもあります。でも、それで良いのです。作業の見通しを持つことも大切ですが、つくりたいと思ったことを実現することのほうが大切だと私たちは考えています。

 

写真3:子どもの作っている作品

 

“真似る”ことで”学ぶ”

 

写真4:おもしろい動きを作った子の作品をみんなで見ている様子

 

 作品づくりの様子を見ていると、子どもが隣の子の画面をしきりに見ていることに気づきました。そして、「それどうやってつくったの?」と聞き、自分の作品に動きや機能を取り入れようとしています。プログラミングは絵を描く事や粘土をこねてつくる作品とは異なり、同じプログラムを作ればまったく同じ動きを再現することができます。手先の器用さは必要ありません。だからこそ、他の子の作品を積極的に真似ていこうという意識が子どもたちのなかに生まれているのかもしれません。

 

写真5:自然と隣の子の作品を覗き込む様子

 

 途中で、自分の作品に音をつけられることに気づいた子がいました。スタートキットでは実際にポケモンのゲームで使われているBGMを用意しているので、曲が流れた途端に「あ!これポケモンの音だ!」と他の子たちも気づきました。その後すぐに教室のいたるところでBGMが流れ始めました。みんなで一緒に学ぶ、という学校の授業ならではの光景でした。

 他の人の作品を見て、それをそのまま自分の作品に取り入れることを、真似されたといって嫌がる子もなかにはいます。しかし、「学び」はもともと「真似ぶ(まねぶ)」に由来していると言うように、参考にすることはとても大切なことなのです。プログラミングをしていると、子どもとコンピュータが閉じられた関係になってしまいがちですが、このクラスのように一緒に学び合うことがとても理想的な姿だと改めて思いました。

 

 授業後、担任の先生に今回の実践について話をうかがうと、まず挙げられたのが、教材としての「入りやすさ」でした。ポケモンという子どもたちにとって身近でよく知っているキャラクターが登場することで、物語を考えること自体のハードルが下がり、自然とバトルの展開や仲間を集めていくといったシナリオが生まれてくるのだといいます。これは、ポケモンという世界観が共有されているからこそ可能になる点だと先生は話していました。

 また先生は、この教材が「真っ白な状態」から始まるわけではなく、適切な足場づくりがなされている点もいいとお話されました。ポケモンの世界という共通の枠組みがあることで、子どもたちは活動の見通しを持ちやすく、その中で試行錯誤を重ねながら、いつの間にか操作の仕方や考え方を身につけていくのだそうです。大人が細かく手順を教えなくても、作っていく過程そのものが学びになっている点に、強い手応えを感じている様子でした。

 プログラミングを「教える」というよりも、「こんな動きをつけてみない?」といった声掛けがしやすく、子どもの発想を妨げることなく関わることができるといいます。プログラミングそのものを教科内容として前面に出すのではなく、動きを考え、つくり、それを楽しむことが活動の中心になっている点に、この教材の大きな価値があるのではないか、と先生は振り返っていました。


 

 


【宮島さんプロフィール】:

1997年5月生まれ。修士(教育学)。広島大学大学院人間社会科学研究科教育データサイエンスプログラム特命助教。 2013年5月から地元である千葉県柏市で小中学生向けのプログラミング道場、CoderDojo Kashiwaを主催・運営。プログラミング教育を始めとするコンピュータと教育について、全国各地で実践・研究を行っている。2015年1月に教育分野のR&D(研究開発)などを行う株式会社 Innovation Power を立ち上げ、現在に至るまで代表取締役社長兼CEOを務める。2017年11月より一般社団法人CoderDojo Japan理事。また、文部科学省調査研究企画推進委員会委員や柏市図書館協議会委員、小学校学校運営協議会委員などの社会的活動も精力的に行っている。

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